アトランタ青少年訪問団派遣レポート② ~第27回日本・アトランタ青少年訪問団派遣事業~
2024年3月の福岡・アトランタ青少年訪問団派遣事業について、訪問団員(5名)のレポートをご紹介します。
2人目は、サブリーダーの修猷館高校 2年 古田さんのレポートです。
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第27回日本・アトランタ青少年訪問団派遣
アメリカでも日本と同じように6歳から16歳まで義務教育期間として設定されている。今回のアトランタ市への訪問を通して、日本とは違ったアメリカの教育についてたくさんの新しい発見があった。その中でも2つをピックアップして話していこうと思う。
1.教育実態
事前研修でアメリカの教育について調べていた私はホストファミリーの教育実態について話を聞いてみることにした。
まず1番に驚いたのは俗にいう飛び級制度だ。私のホストシスターも実際より1つ上のグレードに入っているそうだ。他の派遣団員から聞いた話によると、ある得意な教科のみ1つ上のグレードの授業に入るというホストフレンドもいたそうで、飛び級制度は珍しいことではない。また、その逆もあり、実際私が入ったスペイン語のクラスでは上の学年の友達がホストフレンドと同じクラスで勉強していた。
またアメリカでは、学校に行かずに家で家庭教師を呼んだり、親に勉強を教えてもらったりするホームスクールも1つの選択肢として存在しているそうだ。現在Grade7のホストシスターは実際に火曜日、水曜日、木曜日のみ学校に通い、学校に行かない日には家に家庭教師を雇い家で勉強をしたり、”Agape”でボランティアをしたりして過ごしていた。彼女によると、オリンピックを目指すようなスポーツ選手や、自分のレベルに合ったハイレベルもしくはレベルを落としたカリキュラムで学ぶためにこのホームスクールという選択肢を取っている友達もたくさんいるそうだ。
アメリカ出身の歌手であるテイラースイフトをご存じだろうか。彼女もまた、ホームスクールを経験した一人だそうだ。もしかしたらこのホームスクールという選択が、彼女の歌手としての音楽の才能を伸ばしたのかもしれない。
家で勉強していると聞くと日本では、社会性が育たないのではないかというマイナスなイメージを持つのが一般的であるだろう。しかし彼らは実際には、ホームスクールを選択することによってできた時間をボランティア活動やボーイスカウトなど社会活動に充てている。これによって得られる社会性は将来社会に出て働くようになったとき、一番重要になってくる能力なのではないだろうか。アメリカのように新しい選択肢があることで、個々の才能を伸ばし唯一無二の個性を大切にすることが出来ると考える。
2.“Agape”
“Agape”:ある人から他人への無償の愛(特に事実上の精神的な愛)
私はこのアトランタ滞在中“Agape”の意味と ”Agape”と呼ばれる団体を初めて知った。これは上記のホストシスターがボランティアとして参加している団体だ。日本でいう放課後ディサービスのような位置づけだろうか。
ある日の放課後、ホストファミリーに連れられ私は“Agape”にやってきた。ホストマザーとホストシスターが毎週、週に二回ほどボランティアとして行く場所だ。
“Agape”とは、小学校から中学校に通う子どもたちを対象に、放課後宿題を手伝ったり夜ご飯を提供したり、十分なサービスを受けられない家庭の子どもを支援する団体である。この団体はNPO法人であり、正規職員とボランティアによって成り立っている。
私たちは小学一年生(6~7歳)の子どもたちの支援クラスに入った。クラスには1人の先生につき約20人の生徒と、ボランティア6人が入っていた。6人中5人は中学生のホストシスターを含む学生であった。生徒の中にはスペイン語が第一言語であり、英語が全く話せないという子もいた。私のホストシスターはスペイン語の練習にもなるからといってこの “Agape”のボランティアをしているそうだ。
クラスではまず先生からワークシートをもらい、分からないところはボランティアや先生に教えてもらいながら解き進めていくという授業スタイルだった。ワークシートの内容としては、足し算引き算(算数)、代名詞(英語)、などであった。ワークシートが終わると、オセロやカードゲームをして楽しそうに遊んでいた。
授業中の様子
私がボランティアに入ったクラスではみんな勉強をしていたが、施設内には体育館もあるためスポーツをするクラスもあるそうだ。
スポーツ中の様子
また、学校が終わると “Agape”のバスが生徒を迎えに来たり、夕食まで食べさせてもらえたりサービスが本当に充実している。勉強だけでなく、様々な面で子供たちをサポートしている。
しかし最も驚くべきなのは、“Agape”は生徒たちに無償でこのサービスを提供しているという点である。多くの人々によるボランティアや、募金などによって成り立っているのだそうだ。そしてそのボランティアに参加しているのが中学生や高校生、大学生も多数だという点は驚きである。
施設内の様子
アメリカで一週間生活する中で、できる人ができることをして助け合おうという助け合いの精神を随所で感じた。私は日本でボランティアをしている。しかし、日本で高校生のボランティア参加者は少ないように感じる。ましてや中学生のボランティアは皆無かもしれない。
無償の教育の場を必要な子どもたちに提供し、出来る学生が積極的にボランティアとして関わる。 どちらも当たり前のこととして地域に根付いていることが素晴らしいと感じた。
~最後に~
アメリカで一週間実際に生活してみることで、日本とアメリカ、それぞれの良い点を実感する経験を数えきれないほどした。今回は私自身が感じたアメリカの素晴らしい教育制度について取り上げたが、アメリカでは個人の能力に合わせた教育方針を取っており、学校だけが教育の場でないことを感じた。学生でも自主的に参加するボランティアは、自分を成長させる教育の場であるのかもしれない。またAgapeのような場所は、勉強に関して手助けの必要な子どもに無くてはならない教育の場である。
最後に、このような新しい発見をし、新しい考えを持つことが出来たのは本事業に参加する機会を与えてくださった、コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社様、デルタ航空会社様、株式会社大韓航空様、そして福岡市姉妹都市委員会の皆様のお陰です。他にもたくさんの方々にご協力いただき、素晴らしい10日間を過ごすことが出来ました。本当に感謝しています。ありがとうございました。